同社は2019年に設立され、NTTのグループ会社の中で、農業を専門分野とする。ヒトとモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などの先端技術を活用した「次世代施設園芸」を強みとし、農業の生産性向上や課題解決に取り組んでいる。自社ファームで栽培や技術開発を行う他、施設の設計・施工、システムの提供、コンサルティングなど、包括的な事業も展開。農研機構や自治体などとの連携で、経験の浅い生産者の農業経営を支える、「遠隔営農支援」といった仕組みも築く。
こうした事業の一環で23年から展開しているのが、秋田県での夏秋いちご生産と生産者支援、ブランド販売、加工品展開など一連の産地化支援だ。同社の得意とする技術提供にとどまらず、地域内外のさまざまな関係者と手を携え、生産の川上から川下に至る地域活性化をめざしている。
夏秋いちごは、通常の冬春期のいちごと異なり、春に定植して6、7月から12月上旬ごろにかけて収穫する。国産の出回りが少ない時期のため需要が大きく、高単価での販売が見込める。ただ県内ではほとんど夏秋いちごの栽培例がなく、栽培方法は手探り状態だった。そこで1人の同社社員が県内に移住し、潟上市に「秋田潟上夏秋イチゴファーム」を開設。県外産地の事例なども学びながら栽培技術を磨いていった。
その技術は県内生産者と共有し、取り組む生産者は増加。23年に生産者らが発足した「秋田夏響協議会」で本格的に生産が始まり、25年現在は同社と県内五つの農園や企業が参画。栽培面積約50アールにまで拡大している。

「次世代スマート農業技術の開発・改良・実用化」で実証しているいちごの自動収穫機
6次産業化も進んでいる。連携する県内企業は今年、夏秋いちごを使ったグミや洋菓子などを発売。パッケージには夏秋いちごを使っていることを前面に出し、背景や希少性を消費者に訴えている。秋田駅や秋田空港、県内の道の駅などでお土産向けに販売され、同県の新しい名産品として知名度を高めている。
