スマート農業特集
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技術普及や就農促進…
地域振興の期待高まる

2025.10.24

 スマート農業を地域振興の核に位置づける機運が、各地で高まっている。「スマート農業専門」の地域おこし協力隊員の募集が始まった他、新規就農促進、一段上の生産性向上などに、地域の期待がかかる。

①地域おこし協力隊が普及担う

 北海道江別市は10月上旬、スマート農業の普及啓発を担う地域おこし協力隊員1人の募集を始めた。実演会や勉強会の開催などの他、普及に向けた企画立案なども行ってもらう。
 同市は面積の4割が農業地帯で、水稲、小麦、露地野菜、酪農など、少量多品目の営農が展開されている。大都市圏の札幌市近郊ではあるものの、高齢化などで農業者の人口は減っており、スマート農業のニーズが高まっている。
 募集するのは、スマート農業の知識や経験を持つ人材。業務として①集落でのスマート農業技術の勉強会開催②スマート農業技術導入についての個別相談業務③ドローンによるリモートセンシングなど実機を使った普及啓発活動――などだ。
 委嘱期間は26年4月からの1年間で、更新により最長3年間。11月10日午後5時15分までに、郵送やメールなどで申込書類を同市に提出する。
 2回の選考を経て、12月下旬に正式決定する予定だ。

②吉野家ファーム福島に認定証

 東北農政局は10月上旬、スマート農業を導入して水稲生産に取り組む吉野家ファーム福島に対し、スマート農業技術活用促進法に基づき、技術革新の取り組みへの認定証を交付した。収量センサー付きコンバインの導入などで、労働生産性を高めていく。東北農政局管内ではこれまで、事例の認定があり、水稲では8例目。
 同ファームは福島県白河市で水稲49.5ヘクタール、露地野菜8.5ヘクタールを生産し、従業員数は16人。スマート農業技術活用促進法では、スマート農業による生産性向上の計画「生産方式革新実施計画」を認定し、各種支援措置が受けられることを定めている。同ファームの実施計画では、作期の異なる新品種を導入して作業分散を図りながら、収量センサー付きコンバインで稼働面積を拡大する内容だ。
 認定を受けて同ファームは「特に若い就農希望者が魅力を感じる農業となるよう、本計画の策定に至った。農村特有の風景・多様な役割などを維持しながら、より収益性の高い農産物の生産に一層精進していく」としている。

③働きやすい新規就農魅力発信

 イチゴ大産地の栃木県真岡市は10月上旬、スマート農業による農業の働きやすさを発信し、新規就農を志す人を増やす「魅力発信プロジェクト」を始めた。ふるさと納税によるクラウドファンディングで資金を集め、発信や新規就農者の暮らし支援拡充などを行う。クラウドファンディングの期間は12月31日まで。
 市によると、市内は50年以上連続でイチゴの生産量が日本一。JA全農とちぎなどが品質などを審査する「いちご王国グランプリ」で最高位の大賞を過去全13回中6回受賞しており、質・量ともに「日本一」だ。
 一方でイチゴ農家数は過去年で3割減少し、新規就農者の確保が課題となっている。
 今回のプロジェクトでは、ハウスなど新規就農の際の初期投資が大きいこと、収益が安定するまで一定期間がかかることなどを課題とし、対策に乗り出す。スマート農業を活用したイチゴ生産の動画などを交流サイト(SNS)で発信し、「きつい」などのイメージを払拭。新規就農者の獲得につなげる。市のキャラクターを通じたPRや、移住イベントなども展開する。
 クラウドファンディングは「楽天ふるさと納税」サイトで展開。寄付者への返礼品として、金額に応じてイチゴや地場産スイーツ、イチゴ狩りチケットなどを用意している。

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