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「イチゴのハダニ防除~灌注処理の有用性」座談会①
定植前からうまく抑える

2017年07月25日


 イチゴ栽培で農家・産地を悩ませている「ハダニ」。複数の殺ダニ剤で感受性低下が確認され、代表的な難防除害虫の一つだが、育苗段階から上手に防除して本圃(ほんぽ)への持ち込みを回避し、長期間ハダニの発生を抑えている例もある。そこで育苗期の上手な防除方法、さらに近年注目を集めている薬剤の苗灌注(かんちゅう)処理の有用性について主産県の関係者に話し合ってもらい、ハダニをうまく抑えるヒントを探った。
(司会は本紙・吉澤博英論説委員、文中敬称略)

宮城県農業・園芸総合研究所 園芸環境部虫害チーム 副主任研究員 関根 崇行 氏

関根 崇行 氏

宮城県農業・園芸総合研究所
園芸環境部虫害チーム
副主任研究員

栃木県農業試験場 研究開発部病理昆虫研究室 主任 小林 誠 氏

小林 誠 氏

栃木県農業試験場
研究開発部病理昆虫研究室 主任

愛知県農業総合試験場 環境基盤研究部病害虫防除室 専門員 石川 博司 氏

石川 博司 氏

愛知県農業総合試験場
環境基盤研究部病害虫防除室
専門員

JA香川県 営農部園芸課 病害虫専任指導員  渡邊 丈夫 氏

渡邊 丈夫 氏

JA香川県
営農部園芸課 病害虫専任指導員

福岡県農林業総合試験場  病害虫部病害虫チーム 研究員 柳田 裕紹 氏

柳田 裕紹 氏

福岡県農林業総合試験場
病害虫部病害虫チーム 研究員

バイエル クロップサイエンス カスタマーマーケティング本部 フィールドマーケティング エキスパート 丸山 宗之 氏

丸山 宗之 氏

バイエル クロップサイエンス
カスタマーマーケティング本部 フィールドマーケティング エキスパート

柳田(福岡) 県内のハダニの発生状況は、5月の第5半旬調査で親株の寄生株率26.8%、発生圃場率91.7%とかなり高い状況だった。気温が高く、降水量は平年の半分以下で、発生に好適な状況が続いた。ハダニは苗についた状態で育苗圃から本圃へ持ち込まれるため、育苗段階で発生密度を下げておくことが重要だ。本圃の大きい株より育苗圃の小さい株の方が薬剤もかかりやすい。後追いで防除するより先手、先手で育苗期のハダニを減らすのが基本。初期密度が高いと天敵の導入効果も不安定になりやすい。

司会 重要な育苗期の防除では、どんな方法が普及していますか?また注目する技術はありますか?

関根(宮城) 宮城県は東日本大震災の後、多くの法人が立ち上がり、復興交付金などを活用して大型の高設栽培施設が増えた。高設栽培は床面が高くシートで覆われ乾燥しやすい。そのためハダニの発生量が多く、増殖スピードも速い。県では育苗圃から本圃への持ち込みを回避する各種技術を検討しており、その一つが気門封鎖剤の活用だ。また天敵を長期温存できる「バンカーシート」を設置してハダニを抑える技術も今年度から普及へ移している。スピロテトラマト水和剤(モベントフロアブル)の使用も防除手段の一つだ。イチゴ栽培が盛んな亘理、山元地区では4割近くの圃場で同剤を使っている。大型施設を持つ法人は育苗期に炭酸ガス処理をしているところも多い。

小林(栃木) 栃木県での育苗期防除は、気門封鎖剤を含む薬剤防除を中心に行われている。芳賀や上都賀といった主産地では炭酸ガス処理技術も入っていて、苗でのハダニをゼロにして本圃へ定植するようにしている。炭酸ガス処理はハダニ類を確実にシャットアウトできるため有望視している。スピロテトラマト水和剤は現場で普及しつつある。育苗期後半に灌注処理すると効果が高いという感触があり、今後さらに普及が進むのではないか。

石川(愛知) 愛知県でも年々ハダニ発生が増えている。2015年度に県内28のイチゴの病害虫発生予察調査圃場で、ハダニの発生推移と防除実施状況を調査した。その結果、定植前にしっかり防除しているところはハダニが少なく、栽培期間全体を通して発生を抑えていた。その中でも、スピロテトラマト水和剤の苗灌注処理による防除が行われている圃場では、約半数で本圃へのハダニの持ち込みがなかった。これら本圃への持ち込みがない圃場をさらに詳しく調べたところ、定植直前に成虫に効果のある薬剤も使っていた。成虫に効果の高い薬剤と組み合わせることで、より効果的に防除できると考えられる。

渡邊(香川) 当県は育苗に「すくすくトレイ」を使っているが、苗が混み合っていて気門封鎖剤を散布してもハダニが残りやすい。そのため本圃への定植後、葉が少ない時期に徹底防除する方針にしている。具体的には、気門封鎖剤を中心に3回程度の殺ダニ剤散布をユニットにした防除を指導している。特に、苗床でハダニが多いと卵、幼虫、成虫が混在するので、リセットしてハダニの齢期をそろえる。齢期をそろえておけば薬剤の効果が高いためだ。こうした中で、育苗期にスピロテトラマト水和剤の苗灌注処理とバンカーシート設置を組み合わせた防除方法を検討している。定植20日前ごろにスピロテトラマト水和剤を苗灌注処理し、その後に天敵を放飼することでハダニに対応できると考えている。

柳田(福岡) 薬剤散布は、散布むらがあるとその特性を生かしきれない。薬剤の感受性低下も産地内で差がある状況だ。その点で育苗期の灌注処理なら散布むらがなく、薬剤の効果を発揮しやすいのでメリットがある。

司会 圃場単位でも薬剤感受性に差はあるのでしょうか?

渡邊(香川) 差はある。それに加えて、県内のある産地でハダニの発生状況をモニターしてみたら、明らかに苗の移動でハダニの感受性が低下していた。農家同士で苗を融通していて、きっちり防除している人でも苗をもらったところからハダニももらってしまう。そのため防除指導も個別対応にならざるを得ない。

石川(愛知) 当県でも、炭そ病が発生して苗が不足した農家が知り合いの農家から新たな苗を導入した後、苗についたハダニも持ち込んでいたと考えられる事例があった。補植苗の防除がしっかりできている人とできていない人がいて、補植苗でハダニを広げていることもある。

座談会全景